S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる
先ほどまでは機嫌がよく、課こそ違うが同じ経理部に所属していた者として後輩を激励して可愛がるような様子も見せていたのに、急に態度を変えて峰木への不満を口にし始めるなんて。
しかもその理由が『紗夜にべたべたしている』という、仕事に関係がなさすぎるものだとは。
それに、言うほど峰木はべたべたなんてしていない。たしかに明るく人懐っこい性格で、相手が同僚でも先輩でも上司でも距離が近くフレンドリーな峰木だが、彼の方から同僚の女性社員に必要以上に近づいたり、不用意に接触するようなことはない。
先ほども紗夜と話す声が少々大きかったせいで、話に花が咲いているように見えたのだろうが、峰木は紗夜の身体に触れたわけでも、紗夜が嫌がるような質問をしたわけでもない。
つまり同じ部署に所属する社員同士の雑談としては至って平凡なやりとりで、べたべたと表現するほどではなかったはずだ。
なのになぜ、和季はこんなにも苛立っているのか。
「紗夜の好きな奴って、あいつじゃないよな?」
「! ち、違います……っ」
「あんな若くて軽そうな男、紗夜には似合わない」
「わかってますよ! 違いますから!」
和季が不機嫌を隠そうともせず指摘してくるが、そんなはずがない。
たしかに紗夜は交友関係が広い方でも、人付き合いに積極的な方でもないが、だからといって同じ部署に所属する男性社員を短絡的に好きになるわけではない。