S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる

9分間の攻防


 なんという大胆なことを考えるのか、と思わず呆れた気持ちになってしまう。そしてその気持ちが、つい声に出る。

「社内恋愛解禁というのは、社内で不適切な行為をしてもいい、という意味ではないと思います」

 強情な和季に負けじと頬を膨らませると、彼の指先がぴく、と反応する。

 紗夜の反撃が一定の効果をもたらしたらしい。

「……離すよ。セクハラで訴えられたら、二度と触れられなくなるからな」

 不満そうな表情を見せる和季だが、実際彼の言う通りだ。

 紗夜がハラスメント対策室に『明里常務からセクシャルハラスメントを受けた』と訴えれば、おそらく社内で大問題になることだろう。

 問題が明るみになったときに双方にどんな影響が生じ、どんな処罰が下るのかは不明だが、最終的に紗夜と和季が二度と関わらない形に決着する可能性が高い。

 もちろん紗夜の方からハラスメントを受けたと訴えるつもりはないが、和季にしてみれば可能性はゼロではないので、念のため警戒しているのだろう。

 残念そうにため息をつく和季の様子から、これでようやく解放されると思った。

 だが、そこでまさかの真逆のことが起こる。

「!? なっ、え……!?」

 握られていた手首をぐいっと引かれ、身体をぎゅっと抱きしめられる。

 油断していたせいでバランスを崩した紗夜は、和季の胸の中へ勢いよく倒れ込んでしまう。

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