S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる
この一週間、頭を使ってばかりで脳が疲れた。体力よりも気力と精神力を消費した。
その回復にリソースを割いているせいで、集中力を持続できない状態に陥っているのだ。
しかもこの状況がいつまで続くかわからない、という不安が、よけいに紗夜を億劫にさせている気がする。
今週から社内恋愛が解禁され、社内全体がどことなく浮足立っているせいか、経理課に回されてくる請求書や領収書にも些細なミスが散見されている。
よってそれらをチェックする紗夜も気が抜けない状態が続いているのだが、これについては一時的なものなので、時間の経過とともにいずれ正常化すると予想している。
だから問題だと感じているのは、経理の仕事の方ではない。紗夜の頭を悩ませているのは、和季の存在だった。
「なんであんなに頻繁に会うの……?」
二年前に和季と別れ、その直後に和季の方が経理部から人事部へ異動となったが、その後も仕事で彼と顔を合わせる機会は何度もあった。
しかしそれは二か月前までの話で、この四月に和季が取締役へ就任してからは、社内で顔を合わせる機会はほとんどなくなった。
これまでは多少なりとも会う機会があったが、立場が変わり、勤務するフロアが変わり、社員と役員で一日の仕事の流れも完全に変わったためか、和季と顔を合わせたのはこの二か月で一回あるかないか、という状態だった。