S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる

 だが、今週はまったく違った。

 月曜日の経理課襲来とネクタイピン置き去り事件に続き、火曜日は普段エレベーターを使わないはずの和季と二回も同乗、水曜日は増井からの依頼で常務室へ書類の運搬、木曜日は再び和季の経理課襲来、金曜日はなぜか帰りのタイミングが重なってエントランスホールで捕まる……と、今週はなぜか毎日のように和季と顔を合わせていたのだ。

 正直、同じフロアの人事部にいたときよりも遭遇率が高い。

「常務って暇なのかな……」

 そんなはずはないと理解しつつも、つい失礼な独り言を漏らしてしまう。

 再び、はぁ、とため息をつく。

 気を取り直して座椅子に座ってカーペットに足を伸ばし、目の前のテーブルにのせた参考書を眺めてみる。しかしその内容は、やはりぜんぜん頭に入ってこない。

「集中できないし、ちょっとおでかけしてこようかな……?」

 頭が働かない状態で無理に勉強を続けても意味がない。きっとやったつもりになるだけで、実際はなにも身につかないままだ。

 それがわかっているのなら強引に続けようとせず、気分転換に散歩やショッピングへ出かける方が、時間の使い方としてはよほど有意義だ。

 そうと決まれば、テーブルの参考書をささっと片付け、クローゼットから洋服を選んで手早く着替え、メイクを簡単に済ませたら、髪もふんわりと巻いていく。

「英国貴族展ってまだやってるのかな? もし間に合うなら、もう一回行ってみようかなぁ~」

 外出の準備をしながらうきうきと独り言を零す。

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