S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる

 紗夜にはこれといった趣味や特技、長年続けている習いごとはないが、唯一の楽しみに『アンティーク巡り』があった。

 アンティークとは、作られてから百年以上が経過した調度品や生活用品を指すが、紗夜はその中でも特に『アンティーク家具』を好んでいた。

 残念ながら賃貸住まいの一人暮らしのため、高級なアンティーク家具をいくつも所持しているわけではない。

 だが時間があるときにアンティークショップや骨董品店、美術展や博物館を巡るのが好きで、時折好みの調度品を心ゆくまで眺めて癒されているのだ。

 今は難しくても、いつか上品で可愛らしい家具やインテリア雑貨に囲まれて生活したい、というのが、紗夜の小さな夢である。

 ちなみに紗夜が家具・インテリアメーカー『ルミリュクス』に就職したのも、このアンティーク家具やアンティーク雑貨好きに由来している。

 ルミリュクスは『最先端の技術やシステムを用いて日常生活をより便利に、より快適に』というコンセプトを掲げている会社だが、取り扱う商品のデザインは紗夜の好みと合致しているので、憧れの会社に就職できたことは素直に喜ばしいと思っている。

 とはいえ、やはりアンティークにはアンティークにしか出せない洗練された上品さや一言では表現しにくい無限の美しさがあると思うのだ。

 それを見に行く、というたった今決めた楽しいおでかけ予定に、浮かれ気分のまま部屋の外へ出る。

「ん……?」

 しかし部屋に鍵をかけて振り返った紗夜は、そこで意外な光景を目撃する。

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