S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる

 ずっと空室になっていたはずの、隣の部屋のドアが開いている。さらに奥にあるエレベーターから、作業着姿の男性が二人掛かりで大型の段ボールを運び出している。

(隣、誰か入るのかな……?)

 最初は引っ越し業者かと思った。

 だが作業着に刺繍されている会社名から、彼らがルミリュクスの通販部でも商品配送を依頼している、とある運送会社の作業員だと気づく。

 よく見るとエレベーターや入口付近の養生も行っていないので、この大きな荷物は引っ越し前の家から運んできたものではなく、購入したばかりの新しい家具か家電なのだろう。

 いずれにせよ、隣室に誰かが入居するのは間違いなさそうだ。

 男の人かな、女の人かな、と考えつつエレベーターへ向かおうとした紗夜だったが、隣室の前を通過した直後、開いたドアの向こうから誰かに声をかけられた。

「あ、紗夜」
「……え?」

 親しげに名前を呼ばれたので、ぴたりと足を止めて声がした方へ振り返る。すると。

「!? え、えっ……? かず……っ……明里常務!?」

 そこにいたのはまさかの人物、黒いジーンズと白いTシャツ姿の、明里和季であった。

「あの、ちょ……なん……でっ……え?」

 突然出現した和季に驚愕するあまり、意味のある言葉を発せなくなってしまう。瞬きすら忘れて、その場に呆然と立ち尽くしてしまう。

 そうこうしているうちに配送業者の男性二人が部屋の中へ段ボールを搬入し、中から取り出したベッドボードとフレームを手際よく組み立て始める。

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