S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる
「紗夜と俺は特別な関係だって、会社の奴ら全員に教えたい」
「……」
部屋がある十階にエレベーターが到着したので、とんでもないことを言い出しはじめた和季をその場に残して、箱から出る。
もちろん和季も後をついてくるが、紗夜は『キーケースを取り出すことに一生懸命なので聞いていません』と主張するよう、少し大袈裟な動きで通勤バッグを探る。
だが和季も和季で、そんな紗夜のアピールを綺麗に無視してくる。
「もう『紗夜は俺のものだから手出すな』って、社内放送で宣言しとくか」
「!? ぜっっったい止めてください!」
「冗談だって」
和季の恐ろしい発言にはさすがに無反応ではいられず、勢いよく振り返って強めの口調で文句を言う。
すると和季はすぐに自身の発言を翻して「ごめんごめん」と謝罪してくれたが、紗夜の疲労はさらに増した気がした。
紗夜が本気で嫌がることをするとは思っていない。だがここ最近の和季の行動力は、あまりに驚異的だ。
思い立った直後に引っ越せてしまうほどの経済力があることは知っていたが、いざ行動に移すとなると、普通は腰が重いもの。
最初から紗夜の部屋の隣室を狙っていたのなら場所探しはともかく、賃貸契約、荷造り、引っ越し、荷解き、各種手続きと、手間も時間もかかるのでなかなか実行には移せないものだ。
だが和季はその億劫なプロセスのすべてを軽々と乗り越え、現在、紗夜の隣の部屋に住んでいる。正直、紗夜は未だに意味がわからないし、理解が追いついていない。