S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる

 彼にも紗夜を追い詰めている自覚があるらしいが、それでもここで手を引くつもりはないようだ。

「やっぱり、前と違います」

 困った紗夜が不満を告げると、和季が「ん?」と疑問の声を漏らす。

「……意地悪、です」

 紗夜がそう零したことでこれ以上は難しいと感じたのか、和季が掴んでいた二の腕をパッと離してくれた。

 その瞬間に一歩後ろに下がると、サッと俯いて顔を隠す。

 ただでさえ仕事終わりでメイクも薄くなり、表情を隠せていないのだ。

 もう手遅れだとは思うが、こうでもしなければ火照った頬だけではなく感情まで見透かされてしまいそうだったので、和季の視線から必死に顔を背けてキーケースを探し始める。

「紗夜」

 そんな紗夜の姿をじっと見つめていた和季が、ふとなにか思いついたように声のトーンを上げる。

 和季の纏う空気が和らいだ気がしたので素直に顔を上げた紗夜だが、すぐに後悔した。

「今日、紗夜の部屋に泊まっていいよな?」
「いいわけないでしょうっ」

 油断していたところでいきなり話を飛躍させてきた和季を、思わず大きな声で拒否してしまう。

 それなら大人しく親子丼を振る舞い、食べたらさっさと帰ってもらった方がまだいい――と妥協なんてするから、結局は和季に思い通りになってしまうのだ。

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