S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる

ふたりの時間 -two years ago-


 十二月二十九日、午後六時。

「よし、上出来だ」
「!」

 隣のデスクに座った同じ部署の先輩であり、紗夜の指導係である和季が深く頷くので、ほ、と胸を撫で下ろす。

 紗夜が作成した書類には数字のずれこそ認められなかったものの、万が一ミスをしていたら後から修正が必要になったり、場合によっては監査で不備を突っ込まれた挙句、差し戻される可能性もある。

 けれど先輩の和季に内容を確認してもらい、彼からもOKが出たのなら、もう心配はないだろう。

 ということで、これにて今年の業務のすべてが無事終了である。もしこのタイミングで間違いが見つかったら、年末の最後の最後でさらに残業をしなければならない可能性もあったので、安堵もひとしおだ。

「お疲れさまです、明里先輩。今年一年、ありがとうございました」
「ああ、深田もお疲れ」

 紗夜が感謝の言葉を伝えると、ふ、と表情をゆるめた和季も労いの言葉を返してくれる。

 この一年、紗夜よりも和季の方がよほど大変だったはずだ。なんせ和季は春からずっと、入社一年目で仕事どころか社会の常識すらよくわかっていない紗夜の『新人指導係』を務めてくれていたのだから。しかも、自分の仕事も当たり前にこなしながら、だ。

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