S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる
創業者一族の御曹司である和季から株式会社ルミリュクスの歴史や理念、現在の運営方針や経営状況、そして財務にかかわる業務内容を直接教えてもらえる日々は、紗夜にとってとても充実したものだった。
だから紗夜も早く仕事を覚えて、少しでも和季や会社の役に立ちたいと思えた。
そんな前向きな姿勢を評価されたのだろうか。席から立ち上がって背中と腕を伸ばした和季が、ふと思い立ったように「あ」と声をあげて紗夜を見下ろしてきた。
「深田、このあと予定あるか?」
和季の質問に、帰り支度を始めていた紗夜の手が止まる。
「もしかして、すぐ実家に帰る?」
「いえ」
「じゃあ、俺と二人で打ち上げしよう」
思いがけない提案に思わずぱちぱちと瞬きをしてしまう。すると紗夜を見下ろした和季が、にやりと口の端を上げた。
「忘年会が終わったあとでこんなに仕事したんじゃ、年も忘れた気にならないだろ?」
「……たしかに」
和季の言い分は一理ある。
部署全体の忘年会は、一週間前の金曜日に終えていた。だがその後、つまり今週も、いつもと同じように仕事があった。
それどころか今週は通常業務に加え、年末の締め業務と年明けの監査に向けて年内に済ませておかなければならない確認作業にも追われて、いつも以上に多忙だった。
一週間前の忘年会を遥か昔の記憶だと錯覚するほどに、激務だったのである。