S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる
だから年末年始休暇に入る前に、二人で少しだけ忘年会をやり直そう、というのが和季の主張のようだ。
もちろん、同じ部署の他の人たちを誘うこともできる。だが家族がいる者や休暇で帰省する者は少しでも早く仕事から解放されたい、と思っていると予想し、あえて声をかけないことにしたらしい。
「わかりました。では、ご一緒させてください」
「ああ」
その考えを察した紗夜が素直に頷くと、和季も頷き返してくれる。
財務課の長である本郷課長に本年の全業務の完了報告をして会社を出ると、和季と一緒に電車に乗って六つ先の駅まで移動する。
そこから和季に導かれて辿り着いた場所は、とあるホテル内にある高級中華レストランだった。
「こ、こんなにお洒落なお店なんですか……?」
いい店を知っている、と言われてなんの疑いもなく和季についてきた紗夜だったが、まさかのホテルレストランとは想定外だ。
さすがにリクルートスーツは卒業していたが、お洒落なオフィスカジュアルスタイルに乗り出す勇気はまだ持てなくて、結局定番のビジネススーツを着まわしている。
明らかに仕事帰りの装いだとドレスコードに引っかかるのでは? そもそも今日の紗夜の持ち合わせでは食事代に足りないのでは? と身構えたが、和季は「大丈夫だ」と笑うのみだ。