S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる

「そうですか?」
「ああ、全然ちがう。最初に見たときは、本当に別人だと思った」

 和季が真面目な顔で頷くので、つい苦笑いを零してしまう。

 大学生の頃に知ったのだが、どうやら紗夜は、ブルーライトを長時間浴びると強い頭痛を催してしまう体質らしい。

 よってパソコンで細かい文字や数字を見続けることが多い経理部の仕事中は、度は入っていないがブルーライトカット加工が施された眼鏡をかけている。

 しかもかけたり外したりを繰り返すのが面倒なので、朝のメイク時に眼鏡をかけると、その後は帰宅時まで同じ眼鏡をかけっぱなしだ。もちろん飲み会のときも、そして今も、眼鏡姿のままである。

 そのため職場の人たちは『深田紗夜はかなり視力が悪く、常に眼鏡を手放せない』と認識しているようだ。

 和季も夏に開催されたバーベキュー交流会のときまで、紗夜が眼鏡を外した姿を知らなかったという。

「素顔だとモテるだろ?」
「いいえ、まったく」

 和季が真顔で訊ねてくるので、苦笑いを零しながら首を振る。

「誕生日を一緒に過ごしてくださるのは、面倒見の良い会社の先輩だけですね」

 彩り鮮やかで芸術品のような焼売と小籠包の点心盛り合わせも運ばれてきたので、蒸籠(せいろ)の中を覗き込みつつそう告げると、和季も「そうかそうか」と頷いた。

 だがその和季が途中で動きを止めて、「ん?」と首を傾げる。

「実は私、今日が誕生日なんです」
「へ? ……は!? そうなのか!?」

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