S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる
紗夜が素直に申告すると、和季が驚いたような声を発しながら身を乗り出してきた。その表情を見ると、驚きの中には小さな動揺が含まれている気がする。
「もっと早く言えよな」
「え……。申し訳、ございません……?」
どうやら和季は、自分のはじめての後輩である紗夜の誕生日を祝ってくれるつもりだったらしい。
「二十九日って、小学校や中学校だと終業式が終わって、冬休みになってるじゃないですか。だから実は、友だちにもあんまり祝ってもらったことがないんですよね」
紗夜の説明に、和季が「だろうな」と頷く。庶民の紗夜と違い大きな会社の御曹司である和季なら、小中学生のときから塾や習いごとに励んでいて、学校外にも友人や知り合いが多そうではあった。だが、紗夜の説明に共感はしてくれるようだ。
「しかも今年は、実家の家族も海外住まいの親戚のところへ行ってしまって。年末年始も完全に一人の予定だったので、先輩に誘ってもらえて、うれしいです」
紗夜が照れ笑いを浮かべると、一瞬目を丸くした和季がふわりと微笑んでくれる。
最初はワンモア忘年会のつもりだったが、紗夜が喜んでくれるならいいか、と思い直したらしい。
「誕生日おめでとう、深田」
「ありがとうございます」
和季に改めて祝われたので、紗夜もにこりと笑顔を返す。
家族のグループトークにはお祝いのメッセージが入っていたが、直接は誰からも祝われないまま今年の誕生日を終えてしまうと思っていたので、素直に嬉しい、と思う紗夜である。