S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる
「深田、俺と付き合わないか?」
「……。……え?」
和季がさらりと切り出した提案に、紗夜の時間が一瞬止まる。
それまでの楽しいほろ酔いも、一気にどこかへ吹き飛んでいく。
「え……っと……?」
和季になにを言われているのかすぐにはわからず、とりあえず右の手ひらを彼の目の前へ突き出して左手で自身の頭を押さえつつ、思考を働かせる。
だがいくら考えても和季の意図はわからない。
「あの……うちの会社って、社内恋愛禁止ですよね?」
他に聞きたいことはいくらでもあるはずなのに、上手に働かない頭で一生懸命考えて最初に出てきたのが、その質問だった。
紗夜の問いかけを聞いた和季は「まぁな」と頷いたが、その後に続いた彼の台詞はあまりにも予想外のものだった。
「けど、バレなきゃいいんだよ」
「え? ええぇ……?」
中華格子の背もたれに背中を預けて腕を組んだ和季が、しれっととんでもないことを言う。
規律の遵守を重視し、日々真剣かつ生真面目に仕事に邁進する和季の口から出た台詞とは思えず、ぱちぱちと瞬きをしてしまう。
「そもそも俺は、一刻も早くあの社内恋愛禁止の社則を廃止すべきだと思ってる。意味不明だし、時代にも合ってないだろ」
和季の主張は、実は紗夜も感じていたことだ。