S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる

(すごいなぁ……)

 紗夜が和季の傍で仕事をしていたのは、今から二年も前の話だ。

 その頃から仕事が早く正確で、どんな困難や面倒ごとも前向きに捉え、フットワークが軽く興味を持ったことはとりあえずやってみる意欲と好奇心があり、さらにやると言ったことは最後まで貫き通す芯の強さと責任感も兼ね備えた人だった。

 そんな和季の姿を傍で見ていたはずの紗夜でも、今の彼の行動力には圧倒されてしまう。

 やると言ったことは絶対に成し遂げる彼が、次に狙っている獲物はなにか――そんな想像をするだけで背中がぞくりと痺れてしまう紗夜だ。

 数週間前の恥ずかしい出来事を思い出してひとり照れていると、莉乃がまた思いがけない一言を放つ。

「それに、社内恋愛のことも」
「!? っっごほ、っ……ごほっ」

 紗夜の密かな想像と直結するワードが飛んできたので、ついお茶を噴き出しそうになってしまう。

 そのままゲホゲホとむせ込んでいると、目の前の莉乃が驚いたような表情で紗夜を凝視してきた。

「え、ちょっと紗夜、大丈夫……?」
「へ、平気……。ごめんね、少しむせただけ」

 紗夜が涙目になりながら手を振ると、莉乃が「そう?」と心配そうに首を傾げる。

 それに頷いた紗夜はもう一度お茶を口に含むと、呼吸と気持ちが少し落ち着いてから、ようやくお弁当を食べ始めた。

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