S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる
「社員同士の恋愛が解禁になったんだもん。カップルだって増えるに決まってるじゃない」
「でもみんな、恋人できるの早くない……? まだ解禁になって、一か月も経ってないのに」
背中を丸めた紗夜が周囲に音が響かないよう小さめの声で訊ねると、莉乃が一瞬だけ目を見開く。
だが口元をゆるめた彼女は、すぐに「ふふふ」と笑い出した。
「紗夜って、見た目通り初心だよねぇ」
「見た目通り……!?」
聞き捨てならない台詞でからかわれた気がして、少しだけ声が大きくなる。
たしかに、仕事中の紗夜はいつも首の後ろで髪を一つに束ね、黒縁の眼鏡をかけ、メイクは薄く控えめで、服装もブラウスと膝丈スカートの組み合わせばかりだ。
もちろん莉乃のようなショートカットに濃い赤リップの組み合わせはしたことがないし、同じ経理部の女性社員のようなゆるふわな巻き髪と清楚なワンピースススタイルも試したことがない。紗夜が恋愛上級者には見えないことは、自分自身、百も承知だった。
だが莉乃の主張はそういう意味ではないらしく。
「みんな社内恋愛禁止のルールに黙って従うはずがないでしょ。今までコソコソ隠れて付き合ってたのを、オープンにしただけ。あの二人も、カウンターのとこの二人も、テラスにいる二組も、みんな元からカップルだよ?」
「!? そ、そうだったの……!?」