S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる
勝手に緊張していると、それ以上にびっくりするような質問をされる。
直後に思い浮かんだのは和季の笑顔だったが、それは懸命に頭の中から追い出した。
「え、いや……えっと……」
しかし代わりに別の誰か、あるいは莉乃の質問を受け流す上手な言い訳を思い浮かべようとしても、咄嗟にどう反応していいのかわからず、ついウロウロと視線を彷徨わせてモゴモゴと口籠ってしまう。
「せっかく社内の人とも恋愛できるようになったんだもの。いっぱい恋しないと、もったいないよ?」
「そ、そうだね……」
紗夜の動揺を受け流して笑顔を向けてくる莉乃は、同じ年齢のはずなのに、面倒見のいい姉のようだ。
紗夜の姉と雰囲気が似ているからか、それとも彼女には以前から会社とは無関係の恋人がいるからか、なんとなく紗夜をからかいつつも応援してくれるような余裕が感じられる。
莉乃に対して安堵と感謝を覚えつつ、けれど彼女の提案にどう返答すればよいのかと迷っていると、ふいに後ろから声をかけられた。
「じゃあさ、深田、俺とデートしない?」
「! 瀬戸くん……!?」
思いのほか近くから聞こえた声に驚いて、がばっと振り返る。
するとそれと同時に、背後に立っていた同期の男性社員である瀬戸 陽太が、紗夜の顔をひょいと覗き込んできた。