S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる
営業部に所属する彼は、常にトップとまではいかないが、そこそこ優秀な営業成績を誇っているらしい。
その功績にはフットワークの軽さと押しの強さが不可欠なのか、なんとなく断りにくい空気を作り出されてしまう。
「……まったく」
入社から三年間まったく連絡を取らなくてもなにも不都合がなかったのだから、現状のままなら四年目以降も必要にならない可能性が高い。
そう思ったのは莉乃も同じだったようで、彼女も呆れたようなため息を零していたが、とはいえ嫌なわけではないし、もちろん断る理由もない。
陽太のメッセージアプリに表示されたQRコードを紗夜と莉乃が立て続けに読み取ると、二人のスマートフォンにはすぐに『瀬戸陽太』の名前が追加される。
ヘッダーは音楽フェスのステージと思わしき野外特設会場の風景、アイコンは黒いサングラスをかけた白いポメラニアンの写真である。おそらく陽太の趣味および飼い犬なのだろうが、アプリのプロフィール欄だけで彼の賑やかな性格がよくわかった。
「ありがとう、瀬戸くん」
紗夜が連絡先交換のお礼を伝えると、一瞬だけ目を丸くした陽太が、すぐににこりと微笑む。
愛嬌があって人好きのする顔立ちと、誰にでも気さくな明るい性格から、紗夜の所属する経理部でも陽太の好感度は高い。