S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる

 きっとあちらは仕事用のスマートフォンなのだろう。束の間の休憩時間中も顧客からの連絡に応じなければならないなんて、営業職は本当に大変だ。

 そう思うと、人より早くランチタイムを終えて懸命に走り回っている彼の邪魔をする気は、すぐにどこかへ消え失せる。個人的な連絡ならば、先ほど交換した連絡先に後でゆっくりすればいいだけだ。

「相変わらず嵐のようね」

 莉乃も陽太の忙しさと行動力は感じ取っているらしい。呆れたような表情を見せつつ連絡先の交換は拒まないところを見るに、莉乃も陽太の努力や成果をある程度は認めているようだ。

 ただしそれは、あくまで仕事の話だけのようで。

「でもまあ、瀬戸はおすすめしないかな」
「わかってるってば……!」

 紗夜の顔を見つめてにやりと微笑む莉乃に、慌てて手と首を振る。

 紗夜が否定すると莉乃も「まあ、悪い奴でもないけどね」とフォローを付け加えてきたが、やはりプライベート、特に恋愛面での陽太を評価するつもりはないらしい。

 無駄を承知で「莉乃ちゃんも一緒に……」と誘いかける紗夜だったが「私は行かないわよ」とにこやかな笑みを向けられた。一蹴である。

 おそらく先ほどの会話が陽太にも聞こえていたのだろう。そこで莉乃が口にした『いっぱい恋しないと、もったいないよ』との台詞から、恋愛経験に乏しい紗夜を心配して、あるいは面白がって、声をかけてきたのだと思われる。

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