S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる
そうじゃなければ、陽太が紗夜を誘う理由がない。今は恋人がいないのかもしれないが、外見も性格も交友関係も華やかで明るい陽太なら、どんな女性と付き合うこともできるはずだ。
そんな彼が、普段はほとんど接点がなく、友人にすら『地味だ』と言われる紗夜をあえて選ぶとは思えない。
きっと陽太は、同期のよしみで紗夜を誘ってくれているだけなのだろう。
(まあ、同期との親睦と思えば……)
正直、どうしても陽太と個人的にお出かけしてみたい、と思っているわけではない。
むしろあまりにタイプが違いすぎて早々に話題が尽きたり、価値観の相違が浮き彫りになって気まずくなる可能性が高いのでは、と思っている。
だがせっかく誘ってくれたのに無下にするのも忍びない。それに、仮に一度や二度仕事帰りに食事に出かけたからといって、陽太とどうこうなるとは思えない。
ならば同期との親睦を深めるために、二度目がないことは前提で陽太の誘いに乗ってみるのも悪くないか、と思い直す。
どう考えてもデートではないけどね……と自分で自分に苦笑する紗夜は、少し離れた窓辺の席に和季が座っていたことも、彼がそこから三人のやりとりを不機嫌な表情で聞いていたことにも、このときは気づかないままだった。