S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる
増井に笑顔を向けられた峰木と庄野が、同時に「はあぁ……」と安堵の息をつく。
会社のお金を扱う経理の仕事には責任が伴いプレッシャーもかかるため、できるだけ慎重かつ丁寧に作業して、確認も入念に行いたいところだ。
とはいえ、毎日のように定時を過ぎて仕事をするわけにはいかない。業務の特性上、締め日や社員の給与計算日は絶対に残業になってしまうので、そうじゃない日は極力残業を避けて定時で帰るべき、というのが増井の考えらしい。
峰木と庄野が増井にここまでの作業進捗を報告する傍ら、紗夜は帰り支度を始める。
デスクの上の事務用品を片付け、周囲をササッと清掃し、仕事中に着用しているカーディガンを脱いでワークチェアにかけると、デスクの一番上の引き出しからスマートフォン、一番下の引き出しから通勤に使っているバッグを取り出す。
そのバッグの中へスマートフォンを仕舞おうとして、ふと気がつく。
(そうだ、瀬戸くん)
今日の昼間にやりとりしたばかりなのにすっかりと忘れていたが、そういえば同期の瀬戸陽太と、仕事の後にデートに行く、と約束をしていたのだった。
実際はデートというよりも、日頃のストレスを発散するために同期と食事に行くだけのような気もする。
しかしいずれにせよ、『仕事が終わったら連絡する』という話にはなっていたのだ。
スマートフォンを起動させると、画面の中央に通知が表示される。