S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる

(メッセージ来てる)

 アプリを開いてみると送り主はやはり陽太で、サングラスをかけたポメラニアンのアイコンをタップすると『仕事終わった? 俺もあと少しで終わるから、ちょっとだけ待ってて』とのメッセージが表示される。

 受信時刻は今から三分ほど前だ。

 あと少しってどのぐらいだろう、もし多忙を極めているのなら、今日は無理しなくても……と考える。

「深田さん」

 返信の仕方に迷っていると、奥の席に座る増井から声をかけられた。

 峰木と庄野の報告は終わったらしく、気がつけば紗夜の隣と向かいの席で、彼らも帰宅の準備をしている。

 そんな二人の間で首を傾げた紗夜は、増井の意外な一言につい間抜けな声を発してしまった。

「明里常務から、『深田に執務室まで来てくれ、と伝えてほしい』と連絡があったよ」
「えっ?」

 最初は聞き間違いかと思った。

 現在、仕事で深い関わりがあるわけではない和季に、名指しで呼び出される覚えがなかったからだ。

 それに個人の連絡先を知っている和季が、わざわざ上司を通して内線で呼び出してくるのもおかしい。

 だから紗夜は、呼び出す相手を誰かと間違っているのでは? と考えたが、増井は特に疑問を抱かなかったらしい。

「はい、これIDね」

 増井が差し出してきたものは、一般社員の権限では立ち入れない場所に一時的に入ることが可能となる、特殊な社員IDカードだった。

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