S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる

 下からやってきたエレベーターには誰も乗っていなかったので、中に入って認証ポイントに借りてきたIDカードをかざすと、普段あまり押すことのない七階のボタンを押す。

 直近でこのボタンを押したのは、二週間前に和季の元へ書類を届けたとき。ちなみにそのときもこのIDカードを使っていた。

 扉が閉じて箱が上昇していく浮遊感を覚えながら、今日はいったいなんの用件だろう、と不安を抱く。

 家が隣なのにわざわざ職場で呼び出すということは、本当に仕事の用件なのだろうか、と考える。

 もしそうなら一大事だ。取締役から直接呼び出しを受けるなんて、十中八九よくない話に決まっている。

 だが上司である増井を伴うほどではないということは、仕事でありえないミスをしたわけでもないようにも思う。ならば一体、紗夜がなにをしたのだろうか。

 そんなことを考えているうちにエレベーターが七階に到着したので、不安を抱いたままフロアに降り立つ。

 それから少し歩いた場所にある、扉に『ルミリュクス』『常務取締役室』と書かれた扉をコンコン、とノックする。

 ちなみにこの奥にはルミリュクスの専務取締役の執務室、エレベーターを挟んで反対側の通路には系列会社であるアカリリフォームの常務取締役の執務室と専務取締役の執務室が並んでいる。

「失礼します。経理課の深田です」

 ノックと同時に扉の向こうで人が動く気配がしたので、きっと和季だろうと思いながら声をかける。

 しかし声を発すると同時に、ポケットの中のスマートフォンがヴヴッと振動したことで、はた、と気づく。

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