ベンチから始まる怪談譚
怪談 『歩道橋』
「お母さーん、もうソースがないよー!」
今日の夕飯は、とんかつだった。
明日、息子たちは小学校の野球の試合がある。
「勝つように」と願いを込めて、とんかつを揚げたのだけれど、肝心のソースを切らしていた。
「もう、醤油で食べればいいじゃない」
そう言って何とか食べてもらおうとしたけれど、
「とんかつにはソースって決まってるでしょ!」
と、息子たちは譲らない。
結局、私は近くのスーパーへ買いに行くことになった。
普段ならパートの帰り道にあるスーパーへ寄る。
けれど今日は、ソース一本だけだ。
安さより近さを優先して、普段は通らない道を歩いていた。
無事にソースを買い終えると、私は家路を急いだ。
道を渡るため、歩道橋を上る。
上り切ると前方に、五、六歳くらいの女の子が一人で立っていた。
(こんな時間に、一人……?)
気になったものの、急いでいた私はそのまま女の子の脇を通り過ぎる。
反対側へ渡り、階段を半分ほど下りた、その時。
コロ……。
コロ……。
コロ……。
何かが階段を転がってくる。
私は思わず両手で受け止めた。
見上げると、女の子がじっとこちらを見つめている。
私はもう一度、階段を上った。
「はい、どうぞ」
受け止めたものを差し出しながら声を掛ける。
「もう暗いけど、一人なの? お母さんは?」
女の子は何も答えない。
小さな指をゆっくり持ち上げると、
私の手元を指さした。
「……お母さん」
「えっ?」
背筋が凍る。
恐る恐る手元へ目を落とす。
私が受け止めたのは、ボールではなかった。
長い髪が垂れ、青白い顔が力なくこちらを向いている。
それは、女性の生首だった。
今日の夕飯は、とんかつだった。
明日、息子たちは小学校の野球の試合がある。
「勝つように」と願いを込めて、とんかつを揚げたのだけれど、肝心のソースを切らしていた。
「もう、醤油で食べればいいじゃない」
そう言って何とか食べてもらおうとしたけれど、
「とんかつにはソースって決まってるでしょ!」
と、息子たちは譲らない。
結局、私は近くのスーパーへ買いに行くことになった。
普段ならパートの帰り道にあるスーパーへ寄る。
けれど今日は、ソース一本だけだ。
安さより近さを優先して、普段は通らない道を歩いていた。
無事にソースを買い終えると、私は家路を急いだ。
道を渡るため、歩道橋を上る。
上り切ると前方に、五、六歳くらいの女の子が一人で立っていた。
(こんな時間に、一人……?)
気になったものの、急いでいた私はそのまま女の子の脇を通り過ぎる。
反対側へ渡り、階段を半分ほど下りた、その時。
コロ……。
コロ……。
コロ……。
何かが階段を転がってくる。
私は思わず両手で受け止めた。
見上げると、女の子がじっとこちらを見つめている。
私はもう一度、階段を上った。
「はい、どうぞ」
受け止めたものを差し出しながら声を掛ける。
「もう暗いけど、一人なの? お母さんは?」
女の子は何も答えない。
小さな指をゆっくり持ち上げると、
私の手元を指さした。
「……お母さん」
「えっ?」
背筋が凍る。
恐る恐る手元へ目を落とす。
私が受け止めたのは、ボールではなかった。
長い髪が垂れ、青白い顔が力なくこちらを向いている。
それは、女性の生首だった。