マッチングした相手は片想いの社長でした
遠ざかっていくグレーのスーツ。

私は追いかけることもできず、その背中を見つめていた。

胸の奥が、妙に切ない。

どうして?涼太君は同期なのに。

ずっと友達だったのに。

額に残った感触を、私はしばらく忘れることができなかった。


翌日。会社へ行けば、いつもの日常が待っていた。

そして涼太君も、昨日のことなんてなかったみたいに普通だった。

「那奈、これ確認して」

「あ、うん」

「昨日寝てた分、今日は働けよ」

「もう! それ言わないで」

「あはは」

いつもの涼太君だ。

私もつられて笑う。

やっぱり昨日のキスに深い意味なんてなかったのかもしれない。

そう思えば、少し安心する。

けれど私たちは気づいていなかった。

少し離れた場所から、その様子を見ている春樹さんがいたことに。
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