マッチングした相手は片想いの社長でした
「那奈」

廊下を歩いていたところで名前を呼ばれた。

振り返る。

「春樹さん」

春樹さんが立っていた。

いつもと同じ端正な顔。

なのに、今日は何となく雰囲気が違う。

「こっち来て」

「え?」

腕を掴まれ、そのまま歩き出す。

「春樹さん? どうしたんですか?」

返事はない。

連れて行かれたのは、誰も使っていない会議室だった。

扉が閉まる。次の瞬間――。

「きゃっ」

強く抱きしめられた。

「春樹さん……?」

突然のことに頭が追いつかない。

けれど、大きな腕に包まれた途端、胸の奥にあった落ち着かなさが消えていく。

やっぱり私は、この人が好き。

春樹さんの胸に頬を寄せる。

いつもより強い抱擁。
< 109 / 295 >

この作品をシェア

pagetop