マッチングした相手は片想いの社長でした
「ありがとう、涼太君」

「おう」

私はバッグを手にして急いでオフィスを出た。

「春樹さん」

エレベーターの前まで走っていく。

春樹さんは腕時計を見ていた。

私に気づくと、少しだけ眉を寄せる。

「那奈、遅い」

「ごめんなさい」

「残業禁止だったのに」

「なかなか終わらなくて」

すると春樹さんが、不思議そうな表情をした。

「終わらなかったのか」

「涼太君が代わってくれたの」

 春樹さんの表情が止まった。

「黒瀬が?」

「うん」

春樹さんは何かを考え込む。

「春樹さん?」

どうしたんだろう。

やっぱり気になるのかな。

けれど春樹さんはそれ以上何も言わなかった。

「行こう、那奈」
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