マッチングした相手は片想いの社長でした

第13話 初めての部屋

会社の駐車場へ向かいながら、私はまだ少しだけ落ち着かなかった。

「俺の部屋に来い、那奈」

さっき春樹さんに言われた言葉が、何度も頭の中で繰り返されている。

ホテルで一緒に過ごしたことはある。

抱きしめられたことも、キスされたこともある。

それなのに――春樹さんの家へ行くというだけで、今までとはまるで違う緊張があった。

そこは春樹さんが毎日帰る場所。

会社の社長でもなく、誰かの息子でもない。

ただの一ノ瀬春樹として過ごす場所なのだ。

「那奈?」

「あ、ごめん」

「何考えてた?」

「……内緒」

春樹さんが少し笑った。

駐車場に着くと、春樹さんは車の助手席側へ回ってドアを開けてくれる。

「乗って」

「ありがとう」

こういうことを、春樹さんはいつも自然にする。

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