マッチングした相手は片想いの社長でした
「俺を選んで欲しい」

「涼太君……」

知らなかった。

ううん。本当は、どこかで気づいていたのかもしれない。

残業を手伝ってくれたこと。

映画に連れて行ってくれたこと。

家まで送ってくれたこと。

額に触れたキス。

それでも私は、同期だからと自分に言い聞かせていた。

涼太君の顔が近づく。

お互いの唇が重なった。

胸が苦しくなった。

違う。私が欲しいのは――。

春樹さん。そう思った瞬間、涙がこぼれた。

「那奈?」

「涼太君……ごめんなさい」

涙が止まらない。

「私……春樹さんが好きなの」

涼太君の表情が歪んだ。

その顔を見るのが辛かった。

「ごめんなさい……」

しばらく何も言わなかった涼太君が、やがて小さく息を吐いた。

「分かった」
< 155 / 295 >

この作品をシェア

pagetop