マッチングした相手は片想いの社長でした
本当に、それだけ。

「そういえば、新幹線止まって大変でしたね」

近くにいた女性社員が話に入ってくる。

「ええ、まあ……」

私と涼太君は顔を見合わせ、揃って苦笑した。

あの日は本当に大変だった。

だから、これ以上説明するようなことでもない。

そう思っていたのに――。

「黒瀬さん、出張の領収証出してください」

「あ、これです」

涼太君が財布から領収証を取り出す。

それを受け取った女性社員が、ふと動きを止めた。

「あれ?」

その瞬間、なぜか涼太君の顔が固まった。

「何ですか」

「これ……二人で同じ部屋だったんですか?」

――え。一瞬で、周囲の空気が変わった気がした。

「ははは」

涼太君が困ったように笑う。
< 160 / 295 >

この作品をシェア

pagetop