マッチングした相手は片想いの社長でした
「何かあったんですか?」

「何もないよ」

即答する涼太君に、私は心の中で何度もうなずいた。

そう。何もない。本当に何もなかった。

「ええ? 怪しいですね」

女性社員が面白そうに笑った、そのときだった。

何気なく視線を上げた私は、息を止める。

少し離れたところに――春樹さんが立っていた。

目が合った。

春樹さんの切れ長の目が、わずかに見開かれている。

明らかに今の会話を聞いていた。

まずい。

「水野」

低い声がした。

「どういうこと?」

やっぱり聞かれてた。

「た、たまたまです」

思わず早口になる。

「新幹線が止まって、ホテルが一部屋しか空いてなくて……本当に、それだけです」

春樹さんは私をじっと見た。

「そうか」
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