マッチングした相手は片想いの社長でした
「何もなかったよな」

耳元に落ちてきた声は、いつもの社長の声とは違った。

「うん」

「本当に?」

「本当だよ」

そう答えると、腕の力が少し強くなる。

「胸が張り裂けそうだった」

「……え?」

驚いて振り向く。

そこには、余裕なんて少しもない春樹さんがいた。

「ごめんなさい」

私が謝ると、春樹さんは小さく首を振った。

「那奈を放っておいた俺が馬鹿だった」

「そんなことないよ」

仕事だったんだから。

私だって社員として出張しただけ。

誰も悪くない。

なのに春樹さんは、何かを決意したように私を見る。

「いいや。俺は決めた」

「何を?」

「那奈」

春樹さんの手が、私の肩に触れる。

「俺の秘書になれ」

「ええ?」
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