マッチングした相手は片想いの社長でした
「もちろんだ。視野に入れている」

「那奈さんもよね?」

お母様に見つめられ、私は慌てた。

「は、はい」

「気のない返事ね」

「おふくろが急に言うからだよ」

春樹さんが助け舟を出してくれる。

するとお母様が、ふっと真顔になった。

「まさか香織さんの二の舞にならないわよね」

香織さん?

知らない名前だった。

胸の奥に小さな違和感が生まれる。

「香織さん?」

私が尋ねると、お母様が少し寂しそうに目を伏せた。

「婚約までしたのに、海外に行ってしまって」

……婚約?

私は一瞬、呼吸を忘れた。

春樹さんに、婚約した人がいた?

以前噂になっていた美里さんとは違う。

あれは両親同士が勝手に進めようとしていた話だった。
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