マッチングした相手は片想いの社長でした
でも今、お母様は確かに言った。

婚約までした、と。

「え? 婚約……」

「春樹の落ち込みは相当だったわ」

胸の奥がきゅっと締めつけられる。

知らなかった。

春樹さんにも、そこまで好きだった人がいたんだ。

「昔の話だよ」

春樹さんは淡々と言った。

「そう。ならいいけど」

お母様はそう言って微笑んだ。

春樹さんは私を見る。

「那奈は違うよ」

優しい声。

きっと私を安心させようとしてくれている。

分かってる。昔のことだ。

私と出会う前のこと。

気にする必要なんてない。

「まあ、結婚するなら教えて」

「真っ先に教えるよ」

「楽しみにしてるわ」

お母様はそう言って帰っていった。

私は笑顔で見送った。
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