マッチングした相手は片想いの社長でした
香織の頬を涙が伝った。

「……お人よしね」

「俺が父親だ。いいね」

香織は何も答えなかった。

ただ、静かに泣いていた。

春樹は香織を愛していた過去を否定するつもりはない。

だからこそ、春太のことも背負う。

けれど、これから共に歩く相手はもう決まっている。

春樹は香織と別れ、マンションへ戻った。

玄関を開ける。

部屋の奥には明かりがついていた。

リビングへ向かうと、ソファに座っていた那奈が顔を上げた。

「春樹さん?」

聞き慣れた足音。

そして、リビングに現れた春樹さんが私を見る。

「ただいま、那奈」

その一言を聞いた瞬間、張りつめていたものが全部ほどけた。

「春樹さん」

気づいたときには駆け寄っていた。

そのまま春樹さんの胸に抱きつく。

すぐに大きな腕が私の背中を包んだ。
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