マッチングした相手は片想いの社長でした
父は呆れながらも、追い返さなかったという。

いつものように作業台に向かい、出来上がったねじの品質を確認していく。

一本手に取り、目で見て、指先で触れる。

また次を取る。

「一個一個チェックですか」

「一個に十秒もかかねえよ」

「経験の積み重ねですね」

父は鼻で笑った。

「あんたには馬鹿らしいだろ」

大企業の社長。

何千人もの社員の頂点に立つ人。

父からすれば、一個のねじを自分の手で確かめ続ける仕事なんて、春樹さんには理解できないと思ったのかもしれない。

でも。

「いえ。俺も稟議書は一枚一枚精査しています」

父の手が止まった。

「社長だろ。仕事は任せればいい」

「それも俺の仕事です」

父は春樹さんをじっと見た。

「面倒な社長さんだな」
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