マッチングした相手は片想いの社長でした
「私ね、あなたを忘れたくてマチアプしたの」

「忘れたくて?」

「うん」

婚約者がいるという噂を聞いて。

私が好きになっていい人じゃないと思った。

住む世界が違う。

諦めなきゃ。

忘れなきゃ。

そう思って始めたマッチングアプリだった。

それなのに――。

「でも、忘れなくてよかった」

春樹さんが私を見つめる。

その瞳が優しく細められた。

次の瞬間、唇が重なった。

「またキスしてる」

 涼太君の声が聞こえた。

「しょうがないな、もう」

香織さんまで呆れている。

唇を離した私たちは顔を見合わせる。

「あはは」

笑いが止まらなかった。

こんなに幸せでいいのかな。

そんなことを考えてしまうくらい、私は幸せだった。
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