マッチングした相手は片想いの社長でした
でも、いつもの春樹さんとは少し違って見えた。

会社で見る彼は、いつだって余裕がある。

社員の前で迷う姿なんて見せない。

なのに今夜の春樹さんは、どこか疲れているように見えた。

「分かりました。一緒に飲みましょう」

春樹さんがグラスに赤いワインを注ぐ。

「はい、那奈」

「ありがとうございます」

名前を呼ばれるたびに胸がくすぐったい。

会社では、こんなふうに呼ばれたことなんてほとんどない。

「乾杯」

「乾杯」

グラスを軽く合わせ、一口飲んだ。

芳醇な香りが口いっぱいに広がる。

しばらく二人で静かに飲んでいると、春樹さんがぽつりと言った。

「今日、取締役会議があったんだ」

「取締役会議?」

「俺は自分の方針を述べた」
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