マッチングした相手は片想いの社長でした
そんな私の頬に春樹さんが優しくキスをする。

「綺麗だよ、那奈」

夢みたい。

ずっと遠くから見ていた人が、今はこんなに近くにいる。

私は春樹さんへ手を伸ばした。

「春樹さん……来て」

部屋の灯りが落ちる。

その夜。私はずっと好きだった人の腕の中で眠った。

――でも。

朝になれば、夢は終わる。

カーテンの隙間から差し込む光で、ゆっくり目を覚ました。

「んん……」

「おはよう、那奈」

すぐ近くから聞こえた声に目を開ける。

「春樹さん……」

隣にいる。

昨日のことは夢じゃなかった。

嬉しい。

なのに、その嬉しさと同じくらい胸が痛かった。

一晩だけ。そう思ってここへ来た。

春樹さんが寂しい夜に選んだ相手。

それ以上を望んじゃいけない。
< 37 / 110 >

この作品をシェア

pagetop