マッチングした相手は片想いの社長でした

第10話 近づく距離

週が明けると、オフィスにはいつもと変わらない朝がやってきた。

電話の呼び出し音。キーボードを叩く音。コピー機が規則正しく紙を吐き出す音。

社員たちが忙しそうに行き交う中、私も自分のデスクでパソコンに向かっていた。

けれど――私にとっては、何もかもが今までとは違って見えた。

ホテルで春樹さんと過ごした夜。

朝になっても隣にいてくれたこと。

『那奈。結婚のこと、本気で考えて欲しい』

『君しかいないんだ』

思い出すたびに胸の奥が温かくなる。

つい数週間前まで、春樹さんは私にとって遠い存在だった。

同じ会社に勤めていても、私は企画部の一社員で、彼は社長。

好きになったって届くはずがない。

そう思って、諦めるためにマッチングアプリに登録した。
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