幼馴染からの溺愛が止まらない!
「完全に誤解されたぁぁぁぁ!」
私はソファに崩れ落ちるように倒れ込むと、毛布をすっぽり頭までかぶった。
視界を真っ暗に遮断しても、顔から火が出そうなほどの熱さはちっとも引いてくれない。
その隣では、悠くんと陽くんのお母さんが困ったように私の話を聞いている。
「まぁ、そんなことがあったの?」
「そうなんですぅぅぅ……!」
「それは……浜田くんもびっくりしたでしょうね」
「ですよね!?」
後から思えば、少しくらい冷静になれば分かることだったのだ。
浜田くんは、この二人と私が隣同士の幼馴染ということを一切知らない。
そんな状態の彼が、朝のあの光景(というか、二人からの過剰なスキンシップ)を見たら、どうなるか。
……絶対に勘違いされるに決まっている。
「あー……もう私のバカぁ」
毛布を頭からすっぽり被り直して、私はふたたび重たい深いため息をつく。
頭を抱えてモゾモゾと丸まる私を見て、双子のお母さん……神崎母が微笑みながら紅茶のカップを置いた。
「でも雪ちゃん、浜田くんにはちゃんと説明した方がいいわね。男の子って意外と繊細だから、一度思い込むと自分から聞き出せなかったりするのよ」
「……ですよね。明日、学校でちゃんと話してみます」
「偉いわ、雪ちゃん!」
神崎母は感動したようにパチパチと手を叩く。
「えー、別にそのまま誤解させとけば良いのに」
ふわっと漂う爽やかな石鹸の香りと共に、男の子にしては少し高めの声が頭上から降ってきた。
どこから現れたのか、いつの間にかソファの背もたれに肘を預けていた陽くんが、退屈そうに私の髪先を弄りながらボソッと呟いている。
「ちょっと陽くん、触らない!というか悠くんも、いつからそこにいるの?」
いつの間にか私の足元に腰掛け、ちゃっかり私のスマホでゲームをしていた悠くんが「最初からいたし」と淡々と言い放つ。
(二人とも、パーソナルスペースって知ってる?)
「……とにかく!明日は絶対に浜田くんとちゃんと話すからね。二人とも、明日の朝は絶対に私に近寄らないこと」
「「善処しまーす」」
語尾の伸びきった、全く反省の色が見えない返事に、私の胃は今からキリキリと痛み始めていた。
✳✳✳
翌朝。
ジリリリ!と鳴る直前に奇跡的に目を覚ました私は、二人より先に家を出るために、いつもより三十分早く行動を開始する。
「よし、勝った……!」
左右を何度も確認し、双子の気配がないことを確信してからダッシュで門へ向かう。
ここまでは完璧だ。
勝った、私の平穏な学校生活は守られた。
―――そう確信していたのに。
「遅い。十分待ちぼうけ」
「雪ちゃん、おはよう!早起きえらいねぇ」
電柱の陰から悠くんが、門の壁から陽くんがひょっこり姿を現した。
ここまで来るとホラーだよ!!
「な、何でいるの?もしかして、この家に憑いてる地縛霊だったりする?」
「なわけあるか!」
私の全力のボケに、間髪入れず呆れ顔でツッコむ悠くん。
「僕、朝は早いよ。五時半に起きるもん」
そして胸を張る陽くん。
「ここまで来たら健気なストーカーやん!お願いやから、一人で行かせてよ〜」
「それは聞かれへんお願いやな」
私の必死の願いは、悠くんにあっさりと拒否されてしまった。
「そうだよ、目を離した隙に誘拐されちゃったらどうするの!」
「私、そんな危なっかしくないよ」
「いや、自覚がないのが一番危ないやろ」
呆れたようにため息をつく悠くんに、陽くんが満面の笑みで頷く。
高校に向かい、二人の屁理屈に言い返す気力すら奪われていると、靴箱の角から足音が近づいてきた。
視線を向けると、そこに立っていたのは———カバンをぎゅっと握りしめた浜田くんだった。
浜田くんは私と双子を交互に見つめると、分かりやすくショックを受けたような顔をして、サッと目をそらす。
「あ、浜田くん!」
私は二人の隙間を押し通るようにして、浜田くんのもとへ駆け寄った。
彼はこちらに気づくと、少し気まずそうに歩調を緩める。
「……おはよう、雪さん。あの、俺、邪魔だったかな」
「全然邪魔じゃない!むしろ聞いてほしいの!昨日の朝のやつ、本当に完全な誤解で……!」
勢い余って浜田くんの制服の袖を掴んでしまい、慌てて手を離す。
浜田くんは耳まで真っ赤にして「え、あ、うん」と動揺していた。
「あの二人はただの幼馴染で、隣に住んでるだけで、なんていうか……距離感がバグってるだけで!恋愛感情とかそういうのは一ミリもないから!」
一気にまくし立てると、浜田くんはポカンとしたあと、ゆっくりと状況を理解したように目を丸くした。
「……幼馴染、だったんだ」
「そうなの!だから本当に気にしないで!」
心底ほっとしたように浜田くんの肩の力が抜け、小さく「良かった……」と呟くのが聞こえた。
「……俺、てっきり二人と付き合ってるとか、そういうのかなって思ってて……」
浜田くんは少し恥ずかしそうに下を向きながら、ぽつりと呟いた。
その素直な反応がなんだかおかしくて可愛らしくて、私の胸のつっかえは一気に溶けていく。
「まさか!あり得ないから!二人はただの図々しいご近所さん!」
私はソファに崩れ落ちるように倒れ込むと、毛布をすっぽり頭までかぶった。
視界を真っ暗に遮断しても、顔から火が出そうなほどの熱さはちっとも引いてくれない。
その隣では、悠くんと陽くんのお母さんが困ったように私の話を聞いている。
「まぁ、そんなことがあったの?」
「そうなんですぅぅぅ……!」
「それは……浜田くんもびっくりしたでしょうね」
「ですよね!?」
後から思えば、少しくらい冷静になれば分かることだったのだ。
浜田くんは、この二人と私が隣同士の幼馴染ということを一切知らない。
そんな状態の彼が、朝のあの光景(というか、二人からの過剰なスキンシップ)を見たら、どうなるか。
……絶対に勘違いされるに決まっている。
「あー……もう私のバカぁ」
毛布を頭からすっぽり被り直して、私はふたたび重たい深いため息をつく。
頭を抱えてモゾモゾと丸まる私を見て、双子のお母さん……神崎母が微笑みながら紅茶のカップを置いた。
「でも雪ちゃん、浜田くんにはちゃんと説明した方がいいわね。男の子って意外と繊細だから、一度思い込むと自分から聞き出せなかったりするのよ」
「……ですよね。明日、学校でちゃんと話してみます」
「偉いわ、雪ちゃん!」
神崎母は感動したようにパチパチと手を叩く。
「えー、別にそのまま誤解させとけば良いのに」
ふわっと漂う爽やかな石鹸の香りと共に、男の子にしては少し高めの声が頭上から降ってきた。
どこから現れたのか、いつの間にかソファの背もたれに肘を預けていた陽くんが、退屈そうに私の髪先を弄りながらボソッと呟いている。
「ちょっと陽くん、触らない!というか悠くんも、いつからそこにいるの?」
いつの間にか私の足元に腰掛け、ちゃっかり私のスマホでゲームをしていた悠くんが「最初からいたし」と淡々と言い放つ。
(二人とも、パーソナルスペースって知ってる?)
「……とにかく!明日は絶対に浜田くんとちゃんと話すからね。二人とも、明日の朝は絶対に私に近寄らないこと」
「「善処しまーす」」
語尾の伸びきった、全く反省の色が見えない返事に、私の胃は今からキリキリと痛み始めていた。
✳✳✳
翌朝。
ジリリリ!と鳴る直前に奇跡的に目を覚ました私は、二人より先に家を出るために、いつもより三十分早く行動を開始する。
「よし、勝った……!」
左右を何度も確認し、双子の気配がないことを確信してからダッシュで門へ向かう。
ここまでは完璧だ。
勝った、私の平穏な学校生活は守られた。
―――そう確信していたのに。
「遅い。十分待ちぼうけ」
「雪ちゃん、おはよう!早起きえらいねぇ」
電柱の陰から悠くんが、門の壁から陽くんがひょっこり姿を現した。
ここまで来るとホラーだよ!!
「な、何でいるの?もしかして、この家に憑いてる地縛霊だったりする?」
「なわけあるか!」
私の全力のボケに、間髪入れず呆れ顔でツッコむ悠くん。
「僕、朝は早いよ。五時半に起きるもん」
そして胸を張る陽くん。
「ここまで来たら健気なストーカーやん!お願いやから、一人で行かせてよ〜」
「それは聞かれへんお願いやな」
私の必死の願いは、悠くんにあっさりと拒否されてしまった。
「そうだよ、目を離した隙に誘拐されちゃったらどうするの!」
「私、そんな危なっかしくないよ」
「いや、自覚がないのが一番危ないやろ」
呆れたようにため息をつく悠くんに、陽くんが満面の笑みで頷く。
高校に向かい、二人の屁理屈に言い返す気力すら奪われていると、靴箱の角から足音が近づいてきた。
視線を向けると、そこに立っていたのは———カバンをぎゅっと握りしめた浜田くんだった。
浜田くんは私と双子を交互に見つめると、分かりやすくショックを受けたような顔をして、サッと目をそらす。
「あ、浜田くん!」
私は二人の隙間を押し通るようにして、浜田くんのもとへ駆け寄った。
彼はこちらに気づくと、少し気まずそうに歩調を緩める。
「……おはよう、雪さん。あの、俺、邪魔だったかな」
「全然邪魔じゃない!むしろ聞いてほしいの!昨日の朝のやつ、本当に完全な誤解で……!」
勢い余って浜田くんの制服の袖を掴んでしまい、慌てて手を離す。
浜田くんは耳まで真っ赤にして「え、あ、うん」と動揺していた。
「あの二人はただの幼馴染で、隣に住んでるだけで、なんていうか……距離感がバグってるだけで!恋愛感情とかそういうのは一ミリもないから!」
一気にまくし立てると、浜田くんはポカンとしたあと、ゆっくりと状況を理解したように目を丸くした。
「……幼馴染、だったんだ」
「そうなの!だから本当に気にしないで!」
心底ほっとしたように浜田くんの肩の力が抜け、小さく「良かった……」と呟くのが聞こえた。
「……俺、てっきり二人と付き合ってるとか、そういうのかなって思ってて……」
浜田くんは少し恥ずかしそうに下を向きながら、ぽつりと呟いた。
その素直な反応がなんだかおかしくて可愛らしくて、私の胸のつっかえは一気に溶けていく。
「まさか!あり得ないから!二人はただの図々しいご近所さん!」