幼馴染からの溺愛が止まらない!
第二章、休日くらいは
『松子、お前が好きだ』
『私もよ、源之郎さん』
テレビの中で、男女が見つめ合っている。
感動的な場面なのだろう。
たぶん。
……たぶんね?
私はソファに座り、バリバリとポップコーンを食べながら、長々と悠くんが借りてきた恋愛映画を見せられていた。
ことの始まりは数日前。
あの『浜田くん誤解事件』があってから、神崎母に怒られた二人は、学校での接触をなるべく控えてくれていた。
だからこそ、休日くらいは二人に付き合ってあげるかーなんて軽い気持ちで参加したのだが……完全にチョイスを間違えたかもしれない。
「……」
隣を見る。
悠くんはというと、ポップコーンにはほとんど手を付けず、やけに真剣な顔でテレビを見つめている。
陽くんは映画の中盤あたりで盛大に脱落したらしく、すやすやと心地よさそうな寝息を立てていた。
完全に夢の中。
しばらく、テレビから流れてくる甘ったるい音楽を聞きながら、黙々とポップコーンを食べ続ける。
隣の悠くんは、相変わらず真剣な顔。
……そんなに面白いのかな、この映画。
ストーリーを頭の中で整理してみる。
時は明治時代。
両親の事業失敗で突然巨額の借金を背負い、学年トップの成績優秀者にも関わらず退学の危機に追い込まれた女学生の松子。
しかも、借金返済のために見知らぬ富豪との政略結婚を強いられるという、絶望的すぎる運命。
そんな彼女を救ったのは——なんと、魔法でカエルに姿を変えられていた男の子!
実は二人は以前から密かに愛を育んでいたらしい。
そして富豪以上の財力で借金を一括返済して彼女を引き取った彼は、そのまま松子と感動のゴールイン。
さらに、その美しき愛に感動した学校側の謎の神対応により、松子は退学を撤回されてそのまま学校に通えることになる。
めでたし、めでたし——って。
(情報量が多い!)
一時間くらいの短編映画なのに、もう人生三周分くらいの波乱万丈を経験している。
てか、魔法でカエルに変えられていた男の子って何!?
どっかの童話で読んだ気がするよ。
「いや〜、ええ話やったな」
「え、あ、うん。ソダネー」
棒読みで返しつつテレビを見ると、画面にはすでにエンドロールが流れていた。
穏やかなオルゴールの曲に乗せて、私服姿の松子と元カエルの源之郎が笑顔で手を繋ぎ、夕暮れの海岸を並んで歩いている映像が映し出されている。
「あと五周くらい観てもええくらい面白いのに、陽翔には分からんかったか……」
悠くんは、寝息を立てている陽くんを見ながら、残念そうに呟いた。
五回もカエルとの恋愛話を見れるんだ……悠くんって凄いね。
いや、分かる人には分かる映画なんだろう。
いろんな意味で。
そんなに気に入ったのかな、この映画。
私は一回観ただけでも十分だったけど。
いや、面白かったよ?
面白かったけど……五回はさすがに多くない?
「……悠くんって、こういうの好きなんだね」
「ん?」
「恋愛映画」
「まぁな」
「意外かも」
「そう?」
「うん。もっとこう……サスペンスとか、推理ものとか好きそうなのに」
「それも好きやけど、無性に観たくなる時があるねん」
「へー」
私は空になったポップコーンの袋を机の上に置いた。
さてと。
映画も終わったことだし、そろそろ勝手に人の膝を高級枕代わりにしている男を起こしますか。
「陽くん」
「……んー……」
肩を軽く揺する。
けれど、陽くんは起きない。
「陽くん、起きてー。もう映画終わったよ、カエルも人間になってハッピーエンドだよ」
「…………」
「ほら、起きてー。延滞料金発生するよー」
「ん……あと五分……」
「いつもの寝起きの良い陽くんは何処へ.....」
「……ここにいるよー……」
「ここじゃなくて、起きてー」
「やだぁ……」
「えぇ……」
普段なら、朝なんて私より早く起きて近所のラジオ体操に参加しているのに。
どうして今日はこんなに寝起きが悪いの?
……寝不足か。
テスト勉強に追われて寝不足か、なら仕方ないよね。
「……じゃあ、あと五分だけね」
「……ん」
陽くんは嬉しそうに小さく頷くと、そのまま私の膝に頭を預け直した。
そして私は顔だけ悠くんを見て助けを求める。
「めっちゃ足しびれて感覚ない……どうしよ」
「アホか。どかせばええやろ」
悠くんは呆れたように息を吐きながら、ソファから立ち上がった。
「そうは言ってもさぁ……なんか寝顔見てたら可哀想になってきて」
悠くんはリモコンを持ってテレビの電源を消すと、呆れたように私の足元を見下ろした。
「可哀想って、自分の足の限界が先に来るで。ほら、貸してみ」
悠くんがひょいと手を伸ばし、私の膝の上で丸くなっている陽くんの肩を容赦なく掴んだ。
そのまま「ほら起きろー」と乱暴に引き剥がそうとする。
「……うん……あと一時間……」
「増えてる!」
まさかの時間延長されちゃった……。
『私もよ、源之郎さん』
テレビの中で、男女が見つめ合っている。
感動的な場面なのだろう。
たぶん。
……たぶんね?
私はソファに座り、バリバリとポップコーンを食べながら、長々と悠くんが借りてきた恋愛映画を見せられていた。
ことの始まりは数日前。
あの『浜田くん誤解事件』があってから、神崎母に怒られた二人は、学校での接触をなるべく控えてくれていた。
だからこそ、休日くらいは二人に付き合ってあげるかーなんて軽い気持ちで参加したのだが……完全にチョイスを間違えたかもしれない。
「……」
隣を見る。
悠くんはというと、ポップコーンにはほとんど手を付けず、やけに真剣な顔でテレビを見つめている。
陽くんは映画の中盤あたりで盛大に脱落したらしく、すやすやと心地よさそうな寝息を立てていた。
完全に夢の中。
しばらく、テレビから流れてくる甘ったるい音楽を聞きながら、黙々とポップコーンを食べ続ける。
隣の悠くんは、相変わらず真剣な顔。
……そんなに面白いのかな、この映画。
ストーリーを頭の中で整理してみる。
時は明治時代。
両親の事業失敗で突然巨額の借金を背負い、学年トップの成績優秀者にも関わらず退学の危機に追い込まれた女学生の松子。
しかも、借金返済のために見知らぬ富豪との政略結婚を強いられるという、絶望的すぎる運命。
そんな彼女を救ったのは——なんと、魔法でカエルに姿を変えられていた男の子!
実は二人は以前から密かに愛を育んでいたらしい。
そして富豪以上の財力で借金を一括返済して彼女を引き取った彼は、そのまま松子と感動のゴールイン。
さらに、その美しき愛に感動した学校側の謎の神対応により、松子は退学を撤回されてそのまま学校に通えることになる。
めでたし、めでたし——って。
(情報量が多い!)
一時間くらいの短編映画なのに、もう人生三周分くらいの波乱万丈を経験している。
てか、魔法でカエルに変えられていた男の子って何!?
どっかの童話で読んだ気がするよ。
「いや〜、ええ話やったな」
「え、あ、うん。ソダネー」
棒読みで返しつつテレビを見ると、画面にはすでにエンドロールが流れていた。
穏やかなオルゴールの曲に乗せて、私服姿の松子と元カエルの源之郎が笑顔で手を繋ぎ、夕暮れの海岸を並んで歩いている映像が映し出されている。
「あと五周くらい観てもええくらい面白いのに、陽翔には分からんかったか……」
悠くんは、寝息を立てている陽くんを見ながら、残念そうに呟いた。
五回もカエルとの恋愛話を見れるんだ……悠くんって凄いね。
いや、分かる人には分かる映画なんだろう。
いろんな意味で。
そんなに気に入ったのかな、この映画。
私は一回観ただけでも十分だったけど。
いや、面白かったよ?
面白かったけど……五回はさすがに多くない?
「……悠くんって、こういうの好きなんだね」
「ん?」
「恋愛映画」
「まぁな」
「意外かも」
「そう?」
「うん。もっとこう……サスペンスとか、推理ものとか好きそうなのに」
「それも好きやけど、無性に観たくなる時があるねん」
「へー」
私は空になったポップコーンの袋を机の上に置いた。
さてと。
映画も終わったことだし、そろそろ勝手に人の膝を高級枕代わりにしている男を起こしますか。
「陽くん」
「……んー……」
肩を軽く揺する。
けれど、陽くんは起きない。
「陽くん、起きてー。もう映画終わったよ、カエルも人間になってハッピーエンドだよ」
「…………」
「ほら、起きてー。延滞料金発生するよー」
「ん……あと五分……」
「いつもの寝起きの良い陽くんは何処へ.....」
「……ここにいるよー……」
「ここじゃなくて、起きてー」
「やだぁ……」
「えぇ……」
普段なら、朝なんて私より早く起きて近所のラジオ体操に参加しているのに。
どうして今日はこんなに寝起きが悪いの?
……寝不足か。
テスト勉強に追われて寝不足か、なら仕方ないよね。
「……じゃあ、あと五分だけね」
「……ん」
陽くんは嬉しそうに小さく頷くと、そのまま私の膝に頭を預け直した。
そして私は顔だけ悠くんを見て助けを求める。
「めっちゃ足しびれて感覚ない……どうしよ」
「アホか。どかせばええやろ」
悠くんは呆れたように息を吐きながら、ソファから立ち上がった。
「そうは言ってもさぁ……なんか寝顔見てたら可哀想になってきて」
悠くんはリモコンを持ってテレビの電源を消すと、呆れたように私の足元を見下ろした。
「可哀想って、自分の足の限界が先に来るで。ほら、貸してみ」
悠くんがひょいと手を伸ばし、私の膝の上で丸くなっている陽くんの肩を容赦なく掴んだ。
そのまま「ほら起きろー」と乱暴に引き剥がそうとする。
「……うん……あと一時間……」
「増えてる!」
まさかの時間延長されちゃった……。


