高嶺の花も恋をしたい!
「そ、そうだな! あ、お前……フッ、お前が高嶺さんのところに行きたいんだろう? よし、俺がきっかけを作ってやるよ」

 そういえば、この前の飲み会で誤解されたんだったか。いや、誤解ではなかったな。

 しかしきっかけと言われても、実際の俺たちはすでに同居中なんだが。

 まあ、ここで変に否定するのも後々面倒なので、何も言わず若田についていこう。

……と、そこで聞こえてきたただならぬ話。

 プロポーズだとぉ? 一体誰が花緒に? いつだ? 聞いていないんだが? 一体俺がいない間に何があったんだ⁉

「……プロポーズって、どういうことだよ」

 あまりに動揺した俺は、唐突に女子たちの会話に突っ込んでしまった。

「へ? あ……太……高野君!」
「おいっ、高野⁉ みんな突然でびっくりするだろう! も、桃子、こっちに邪魔していいか?」
「慎一……いいの? あっち、抜け出してきて」
「いいに決まってるだろう? もう三枝中心に支店の話で盛り上がってるし」

 若田が彼女に気を遣いながら、椅子を持ってきて誕生日席に座った。

「おーお疲れ、お疲れ! 高野君も座りなよ」

 営業補佐の山口が席を立って、自分の席を俺に勧めてくれる。

 この山口はさばさばした性格で、ほかの女子社員に比べて媚びた喋り方をしない。だから仕事でも気兼ねなく喋れる存在だった。

「いや、ここでいいよ」
 
 せっかくの気遣いだったが、俺は山口がいた花緒の向かい側ではなく、花緒の左横の、バッグが置かれている椅子を引いた。

「あ、ど、どうぞ……」

 花緒が自分のバッグを取り上げ、おどおどしながら席を空けてくれた。突然俺たちが乱入して、動揺しているようだ。

 しかし俺は先ほどの話の方が気になる。早く続きが聞きたい。

「あ――コホン。話の腰を折っちゃったかなー。何の話をしてたの? さっきちょっとプロポーズって聞こえたけど」

 ナイス。若田が話を続けてくれた。
< 112 / 237 >

この作品をシェア

pagetop