高嶺の花も恋をしたい!
 鳥居の上に合掌型の屋根が付いた、珍しい山王鳥居をくぐり、日枝造りで有名な西本宮本殿にたどり着く。

「荘厳……! 神様のいるところって感じがするね……。山王鳥居をくぐってからここまでの道も神秘的だった」
「この日枝造りといい、山王鳥居の合掌鳥居といい、ここは本当に独自なんだ。日吉大社は神仏習合の影響を大きく受けていると言われている」

 高野が本殿の造りや工法、その思想観に至るまで丁寧に説明してくれる。正直ここまで歴史的建造物に詳しいと思っていなくて、その知識量に圧倒される。

「太一くん、本当によく知ってるのね」
「うちはじいさんが土建屋で、小さい時から建築現場が遊び場みたいな感じだったんだ。それに俺、博士論文が日本の歴史的建造物をテーマにしてたから」

 それは筋金入りだ。

 その時になって、私は高野のことをあまり知らないことに気づいた。

 どうして建築の道へ進んだのか、それに実家のことも。

 今の話だと、きっとおじい様の影響なんだろうな。

「そうだ、知ってるか? ここの神仏習合を象徴するものの一つに、山王宮曼荼羅というのがあるんだ」
「山王宮曼荼羅? 曼荼羅って、仏教じゃないの? でも『宮』って……神道?」
「そう、まさに名前からして神仏習合だろ。日吉大社の景観を俯瞰的に描いていて、その上にこの仏様はこの神様って、21の神仏を照らし合わせるように並べて描かれているんだ。いわゆる本地垂迹説というものだ。山王宮曼荼羅はそれがよくわかる宗教画だな」
「へー、見てみたい」
「残念ながらここにはないんだ。奈良国立博物館にある。なかなか神秘的で引き込まれるような宗教画だ。いつか花緒にも見せたいな」
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