高嶺の花も恋をしたい!
「いっぱい試験勉強を見てくれたのに、ごめんね」
「いや、花緒は頑張ったよ。ただどうしても経験不足は否めない。元々一級建築士の試験は、実務経験を積んでからしか受けられなかったんだ。実務が後回しになったからと言って、試験内容が大幅に変わるわけじゃない。やっぱり経験って必要なんだよ」

 建設会社で、インターンとして4年の実務経験を経てから、一級を受けた高野の言葉には重みがあった。

「来年に向けてまた頑張ろう。そのためにも、異動が叶うといいな」
「うん……」

 励ましてくれる恋人がいて、ありがたいと思う。
 高野は私にとって恋人であり、先を行く先輩であり、師でもある。

 もう、この人がいない生活は考えられない……。


 3月に入り、人事から呼び出しがあった。

「高嶺さん、4月から副社長秘書になってもらうわ」
「副社長秘書……?」
「今度新しく副社長に就任されるの。その方の補佐をして――」
「待ってください! 私は設計部に希望を出しました。秘書課じゃありません! どうしてそんなことになるんですか? この一年、受付に立ちながら一級建築士の試験を受けて、一次は合格しました。二次はダメでしたが、実務の経験を積まないと来年合格できたとしてもずっと登録ができないままになります」
「それはあなたの事情でしょう? 会社があなたに一級建築士の資格を取ってほしいとお願いしているわけではないのよ? あなたそこのところを間違えていない?」
「……!」
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