高嶺の花も恋をしたい!
――可愛いなんて、家族以外にはじめて言われた!
 
 バタバタと部屋へ駆け込み、バスルームの鏡の前に立つと、真っ赤な顔の私がいた。

 よくよく思い返してみれば、「可愛い」という言葉は私自身ではなく、名前に対してだったような気がする。

 それでも、この高慢ちきにしか思われないような名前を「可愛い」と言ってくれる人がいた。

 それだけで私にとっては一大事で、憧れの「可愛い」がもらえたことがとても嬉しかったのだ。

 高野さんか……。

 非常階段を覗いた時は、女性に対しての塩対応に驚いてしまったけど、あの人が言っていることはとても正しいと思った。

 私も今は新社会人として自分を成長させる時であり、恋愛なんて考えられないと思う。

 もちろん彼と違い、私の場合は全くモテないからなんの心配もないのだけれど。

 でも、自分の信念をちゃんと伝えてお断りする彼の姿は、正しいと感じた。

 満員電車の救世主……もう一度会えて良かったな……。

 その日は少し興奮してなかなか眠りにつけなかった。


 翌日、各班の出し物が発表された。
 ダンスをする班やコントをする班。昨日の半日で考えたとは思えないクオリティの出し物をする班も多くあった。

 7班も無事『青と夏』を歌い上げ、たくさんの拍手をいただいた。

 驚いたのは15班。あの高野さんの班だ。
 私たちと同じ『青と夏』を歌ったのだけれど、音源がアコースティックギターだったのだ。おそらくホテルで借りたのだろう。

 演奏をしていたのは高野だった。

 サブスクから見つけたコーラスバージョンの音源をそのまま利用した7班とは違い、アコースティックバージョンはとても味があった。

 優劣を競うものではなかったけれど、確実に15班の方が格上で、私たちの発表の方が先でよかったと心から思ったのだった。
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