高嶺の花も恋をしたい!
副社長秘書になりました
 3月も半ばになり、私は新年度を待たずに秘書課へ異動した。

 4月1日に就任される副社長をお迎えするため、一足先に秘書業務に慣れておく必要があるからだ。

 役員フロアは、夏成ハウスコーポレーション本社ビルの8階にある。そこには社長、副社長、常務取締役それぞれの部屋が並んであり、給湯室を挟んで秘書課の事務室があった。

 事務室には、各役員秘書をまとめる秘書課長を筆頭に、役付きでない秘書2名の机がある。
 
「総務部受付から来ました、高嶺花緒です。よろしくお願いします!」
「秘書課長の末永です」

 秘書課長の末永さんは、眼鏡をかけ、撫でつけた七三分けがいかにも真面目そうな、五十代前半の男性だった。
 
「あなたのデスクは、副社長室の前室にあります。今日の午前中には、システム情報部から専用PCが届くはずですから、届いたらこの仲野から業務内容を教わってください」
「仲野です。突然副社長秘書に抜擢されるなんて大変だと思うけど、頑張ってね。私と氏家もサポートするから」
「氏家です」
「高嶺です。よろしくお願いします!」

 仲野さんは四十代前半とみられる、落ち着いた感じの女性だ。左の薬指に指輪をされているから、既婚者で、おそらくお子さんもいるのだろう。
 氏家さんは、30代前半の若い男性だ。小柄で誠実そうな、ほわっとした笑顔の持ち主。
 どちらもとても感じが良さそうな方なので、ホッとした。
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