高嶺の花も恋をしたい!
「まったく……顔がいいだけの受付嬢を副社長秘書に抜擢するなんて、翔多坊ちゃんも何を考えているのか……」

 末永課長がぶつぶつと文句を言いながら、眼鏡のブリッジを上げた。

 前半はいかにも言われそうな内容だったけれど、翔多坊ちゃんって……?

「課長、失礼ですよ! それに坊ちゃんって言うと怒られますよ。もう副社長なんですから」
「わかってますよ! ですが夏崎副社長だと社長とかぶってしまうでしょう」
「たしかに。では副社長だけでよろしいのでは?」
「あの……」
「なんですか、高嶺さん」
「新しい副社長はナツサキショウタさんとおっしゃるのでしょうか……?」
「おや? 人事課長から聞いてなかったのですか?」

 聞いてない。あの時点では、多くは言えないって言ってたし、そもそも全てはオフレコだと釘を刺されていた。

 夏成ハウスコーポレーションの『夏』は創始者である『夏崎』から取った会社名だ。夏成の社員であればだれでも知っていることだった。

 そして、現社長の名前も夏崎社長。
 つまり――

「新副社長は夏崎社長のご長男、夏崎翔多氏です。御年37歳。本社から東京支社へ転勤されて10年経ち、この度副社長として本社へ戻られることになりました」
「そ、そうでしたか」
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