高嶺の花も恋をしたい!
「その様子だと、全く覚えていないみたいだな」
「え? す、すみません。以前どこかでお会いしたのでしょうか? 私はつい先日まで本社の受付にいたのですが、その時に……?」
「いや、もっと前だよ。こうしたらわかるかな?」

 そう言って、副社長が眼鏡をはずした。そして前髪をくいっと上に上げる。

「……あっ! え、設計士さん⁉」
「思い出した? あの時はまだ眼鏡をかけてなくて、新入社員だったから、スッキリ見えるように前髪を上げていたからね」

 そうだ。言われてその姿を思い出した。彼は高嶺の実家を建てた時の担当設計士だった。

「俺が初めて一人で設計を担当したのが高嶺邸だったんだ。だから今でもよく高嶺家のことは覚えているよ。花緒ちゃんは当時も美少女だなぁと思っていたけど、さらに美しさに磨きがかかったね。もう立派な大人だし」
「私はあの時小学6年生でしたから。あれから10年以上経ってますし、もうすっかり大人ですよ」

 名前までは覚えていなかったけれど、私が設計士になりたいと思ったきっかけがこの人だった。

 サラサラと目の前で図面を書き、私たち家族の要望をくみ取って間取りを変更していく様子は、まるで魔法のようだったのを今でも覚えている。

 まさかあの時の設計士さんが副社長になって目の前に現れるとは思ってもみなかった。しかも私がこの人の秘書だなんて――
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