高嶺の花も恋をしたい!
◇ ◇ ◇
母親が丸高組を継ぐと言い出して、すべてが丸く収まったわけではなかった。
宮大工の世界は男社会だ。歴史を遡って女棟梁がいなかったわけではないが、当時はほぼゼロに近いのが現実だった。
丸高組の宮大工も皆プライドを持った男たちで、そんな中、女棟梁を認めるものは一人もいなかった。
母親は夏崎家に生まれたものの、建築に関してはど素人だったから、その点でも問題外だったのだ。
しかし母親は祖父に無理やり弟子入りし、見よう見まねで仕事を学んでいきながら、墨付け師として才能を発揮し始めた。
「墨付け師?」
「主に木材に加工のための目印や線を入れる作業なんだが、それだけじゃなく木材の性質を見極めて、木を最適な加工へ導く役割もある」
「すごい……重要な役割なのね」
「ああ。妊娠出産子育てを繰り返しながら、墨付けの仕事をこなし、今では丸高組にとってなくてはならない存在になっている」
「お母様……かっこよすぎる!」
「だから俺は、ほぼ建築現場で育ったようなものなんだ。母親が仕事している横で、じいさんたち職人にたくさんのことを教えられた。俺にとってはそれが遊びみたいなものだったんだが、今になってあれは教育だったんだと思う」
「宮大工の英才教育?」
「ま、そんなとこだな」
だからそんなに知識が豊富なのね、と花緒が尊敬の目で俺を見てくれる。
母親が丸高組を継ぐと言い出して、すべてが丸く収まったわけではなかった。
宮大工の世界は男社会だ。歴史を遡って女棟梁がいなかったわけではないが、当時はほぼゼロに近いのが現実だった。
丸高組の宮大工も皆プライドを持った男たちで、そんな中、女棟梁を認めるものは一人もいなかった。
母親は夏崎家に生まれたものの、建築に関してはど素人だったから、その点でも問題外だったのだ。
しかし母親は祖父に無理やり弟子入りし、見よう見まねで仕事を学んでいきながら、墨付け師として才能を発揮し始めた。
「墨付け師?」
「主に木材に加工のための目印や線を入れる作業なんだが、それだけじゃなく木材の性質を見極めて、木を最適な加工へ導く役割もある」
「すごい……重要な役割なのね」
「ああ。妊娠出産子育てを繰り返しながら、墨付けの仕事をこなし、今では丸高組にとってなくてはならない存在になっている」
「お母様……かっこよすぎる!」
「だから俺は、ほぼ建築現場で育ったようなものなんだ。母親が仕事している横で、じいさんたち職人にたくさんのことを教えられた。俺にとってはそれが遊びみたいなものだったんだが、今になってあれは教育だったんだと思う」
「宮大工の英才教育?」
「ま、そんなとこだな」
だからそんなに知識が豊富なのね、と花緒が尊敬の目で俺を見てくれる。